2023 年 23 巻 1 号 p. 33-39
ガイドラインは,エビデンスに基づいて理学療法を提供するための貴重な情報源として参考にすべきである。頸部機能障害理学療法ガイドライン第2版のCQ(Clinical Question)1-10は,弱い推奨,条件付き推奨,反対する条件付き推奨のいずれかに判断され,エビデンスの強さはすべてがD(ほとんど確信できない)であった。経過観察ではなく他の保存療法と比較しているCQでは,介入群の真の効果については不明確のままである。第2版のCQ1と第1版の徒手的理学療法で推奨の方向が変わった理由の一つは,第2版のCQ1では関節モビライゼーション単独の治療効果を述べていることにある。頸部機能障害理学療法ガイドライン第2版では,欧米のガイドラインとは少し異なった推奨となっているものが少なくない。しかし,結論としては欧米のガイドラインとほぼ同じ内容となっており,今後のさらなる研究が待たれる。頸部機能障害理学療法ガイドライン第2版の推奨は,システマティックレビューによるエビデンス,理学療法士自身の知識・技術なども含めて総合的に勘案し,最終的な適用の判断は患者と協働して行わなければならない。