徒手理学療法
Online ISSN : 2434-4087
Print ISSN : 1346-9223
23 巻, 1 号
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巻頭言
研究論文
  • ―オーバービューレビュー―
    有家 尚志, 東 裕一, 中村 駿佑, 池田 翔, 平田 靖典
    2023 年 23 巻 1 号 p. 3-10
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/20
    ジャーナル フリー

    Lateral elbow tendinopathy(LET)に対する保存療法の一つに徒手療法があるが,効果について邦文で整理されたエビデンスは不十分である。本研究の目的は,LETを有する人々を対象に,徒手療法の効果を検証したシステマティックレビュー(SR)を網羅的に評価することとした。PubMed,CENTRAL,PEDroを用いて検索した(検索日2022年2月)。方法論の質評価には,A Measurement Tool to Assess Systematic Review 2を用いた。論文の選択,データ抽出,方法論の質評価は,2名の研究者が独立して実施した。最終的に3件のSRが該当し,質的に分析した。介入として検討された徒手療法は,mobilization,neural tension,deep friction massage(DFM),Mill’s manipulationが含まれた。3件ともに,研究計画の事前登録が不十分であった。エビデンスの確実性は,DFMが疼痛と機能のアウトカムに与える効果のみ検証されていたが,very lowであった。本研究の結果,LETに対する徒手療法の効果について検証するには十分なエビデンスがなかった。今後は,アウトカムを統一して検討することが重要である。

  • ―システマティックレビューおよびメタアナリシス―
    越野 裕太, 石田 知也, 石田 和宏
    2023 年 23 巻 1 号 p. 11-17
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/20
    ジャーナル フリー

    〔目的〕本論文の目的は,足関節・足部骨折症例に対する徒手療法が足関節背屈可動域に与える効果を,システマティックレビューおよびメタアナリシスによって明らかにすることとした。〔方法〕5つのデータベースを用いて2022年7月までの論文を検索およびスクリーニングを行い,足関節・足部骨折症例に対する徒手療法の介入が足関節背屈可動域に与える効果を研究した無作為化比較試験を特定した。背屈可動域への効果を徒手療法群と対照群で比較するためにメタアナリシスを実施した。〔結果〕3つの論文が採用され(計172名),介入内容は関節モビライゼーションが主だった。背屈可動域への効果に関して徒手療法群と対照群に有意差を認めなかった(標準化平均差 0.05; 95%信頼区間 -0.50, 0.60)。〔結論〕足関節・足部骨折症例に対する関節モビライゼーションは背屈可動域の有意な改善効果を認めなかった。今後質の高い研究が必要であると考えられた。

講座
  • 青柳 洪作
    2023 年 23 巻 1 号 p. 19-25
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/20
    ジャーナル フリー

    近年における慢性痛に対する飛躍的な科学の進歩により,局所の問題にフォーカスしたアプローチまたは職種ごとの断片的なアプローチでは大きな治療効果を上げられないことが分かった。特にnociplastic pain(中枢性疼痛)やbiopsychosocial model(生物心理社会モデル)における最新知識により,慢性痛の原因は,局所から脳,また,生物学的要因から,心理的要因,社会文化的要因までと実に多因子的で複雑に絡み合っていることが分かってきた。本稿ではこれらに対応したinterdisciplinary pain management(学際的疼痛管理)とその重要なチームの一角を担う理学療法士に求められている役割と最先端のアプローチについて紹介する。

  • ―理論的背景と臨床応用―
    三根 幸彌, Cocks Tim
    2023 年 23 巻 1 号 p. 27-32
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/20
    ジャーナル フリー

    本稿はGraded Motor Imagery(GMI)の理論的背景と臨床応用について概説する。GMIとはその名の通り,段階的な(Graded)運動想起(Motor Imagery)を用いた評価・治療体系であり,複合性局所疼痛症候群や幻肢痛,凍結肩,橈骨遠位端骨折,上肢の末梢神経障害性疼痛の治療において効果的であるという研究エビデンスが存在する。また,その考え方が腰痛を含む他の慢性痛に対しても応用されている。一般的にGMIは3つの段階的な運動想起課題を有しており,具体的には①左右識別課題(Left/Right Judgement Task),②Explicit Motor Imagery,③ミラーセラピーで構成される。一般的な徒手療法や運動療法が適用とならないような慢性痛に対して,GMIという評価・治療体系が有効なアプローチとなる可能性がある。

総説
  • 山内 正雄, 石田 弘
    2023 年 23 巻 1 号 p. 33-39
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/20
    ジャーナル フリー

    ガイドラインは,エビデンスに基づいて理学療法を提供するための貴重な情報源として参考にすべきである。頸部機能障害理学療法ガイドライン第2版のCQ(Clinical Question)1-10は,弱い推奨,条件付き推奨,反対する条件付き推奨のいずれかに判断され,エビデンスの強さはすべてがD(ほとんど確信できない)であった。経過観察ではなく他の保存療法と比較しているCQでは,介入群の真の効果については不明確のままである。第2版のCQ1と第1版の徒手的理学療法で推奨の方向が変わった理由の一つは,第2版のCQ1では関節モビライゼーション単独の治療効果を述べていることにある。頸部機能障害理学療法ガイドライン第2版では,欧米のガイドラインとは少し異なった推奨となっているものが少なくない。しかし,結論としては欧米のガイドラインとほぼ同じ内容となっており,今後のさらなる研究が待たれる。頸部機能障害理学療法ガイドライン第2版の推奨は,システマティックレビューによるエビデンス,理学療法士自身の知識・技術なども含めて総合的に勘案し,最終的な適用の判断は患者と協働して行わなければならない。

  • ―システマティック・レビューとメタアナリシス―
    浅田 啓嗣, 安彦 鉄平, 畠 昌史, 堀口 達也
    2023 年 23 巻 1 号 p. 41-44
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/20
    ジャーナル フリー

    〔目的〕本稿の目的は,腰部脊柱管狭窄症を有する患者の疼痛と歩行障害に対する理学療法の効果に関する根拠を提供することである。〔方法〕5種類のデータベース(医学中央雑誌, PubMed,PEDro,OTseeker,CENTRAL)を用いて, 2019年6月までの英語または日本語の科学雑誌に掲載された,腰部脊柱管狭窄症を対象に保存的介入を行った研究を系統検索し,メタアナリシスを実施した。〔結果〕基準に合致した4件のRCTを採用した。メタアナリシスの結果,複合的な理学療法を施行した介入群ではコントロール群に比べ,中期および長期的に有意な疼痛の改善が確認された。歩行能力に関しては,中期的・長期的に介入群に有意な効果が認められた。〔結論〕複合的な理学療法は背部痛・下肢痛および連続歩行距離に対して有効性を示す限定的なエビデンスが示された。最適な理学療法として何を選択すべきかについては明らかにすることはできなかった。

  • 坂 雅之, 村木 孝行
    2023 年 23 巻 1 号 p. 51-58
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/20
    ジャーナル フリー

    凍結肩に対する理学療法は,生活指導やストレッチングを主体とした運動療法から構成され,これに徒手療法を加えることが推奨されている。本稿では,「凍結肩患者に対する治療として,システマティックレビューおよびメタアナリシスによりその効果が支持されている徒手療法はあるか」という疑問に答えるべく,現在利用可能なエビデンスを整理した。2022年10月までに公表された凍結肩に対する徒手療法に関連するシステマティックレビュー論文17編のうち,5編の論文でメタアナリシスが行われていた。これらのメタアナリシスの結果に基づくと,拘縮期または凍結期の凍結肩患者に対して,運動併用モビライゼーションや関節モビライゼーションが疼痛軽減,肩関節可動域改善に有効である可能性が示された。炎症期の患者に適用できる徒手療法,徒手療法の最適な治療回数・期間,運動療法と併用した際に期待される効果等に関しては不明であり,今後の研究課題と言える。

  • ―理学療法ガイドライン第2版からの検証―
    髙宮 尚之, 正真 由香里, 三根 幸彌
    2023 年 23 巻 1 号 p. 59-65
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/20
    ジャーナル フリー

    2021年10月に理学療法ガイドライン第2版が完成し,発刊された。その中には,「手関節・手指機能障害理学療法ガイドライン」が収録されており,対象疾患として手根管症候群に関するクリニカルクエスチョンが掲載されている。手根管症候群の保存療法における理学療法としては,神経・腱の滑走運動や手根骨モビライゼーションなどによる徒手理学療法による介入が多かった。その効果としては,疼痛と感覚障害に対して改善がみられることにより,患者の心理的負担要素の軽減を図ることが可能であると考えられる。一方で,非常に弱いエビデンスが多いのが現状であり,バイアスリスクを克服してサンプル数の多い質の高いRCT研究が望まれる。日常の臨床場面において一定水準以上の理学療法が実施されるとともに,その質のさらなる向上のため,本ガイドラインが幅広く活用されることを期待する。

  • ―システマティックレビュー―
    家入 章, 対馬 栄輝, 加藤 浩, 葉 清規, 久保 佑介
    2023 年 23 巻 1 号 p. 67-74
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/20
    ジャーナル フリー

    〔目的〕変形性股関節症(股OA)に対する徒手療法の効果について再調査することである。〔デザイン〕PRISMA声明を参考に作成したシステマティックレビュー。〔方法〕検索は,2022年3月31日まで実施し,MEDLINE/PubMed,Cochrane Library,Physiotherapy Evidence Database(PEDro)を使用した。対象は,40歳以上の股OA患者とした。〔結果〕4,630編の論文が特定され,適格基準を満たした13編の論文が選択された。本邦からの報告は無かった。12編はPEDroスケールで8点以上と高い研究の質を示した。徒手療法は,一般的治療や徒手療法を含まない治療と比べると股OAの痛み,身体機能,QOLの改善,質調整生存率(QALYs)の増加に有効であるとの報告が多かったが,効果を疑問視する報告も3編みられた。〔結論〕股OAに対する徒手療法の効果は他の治療と比べて明らかに効果があるとはいえない。本邦からの報告は皆無であるため独自の調査も望まれる。

  • 乙戸 崇寛, 北川 裕貴, 柏原 大和, 澤田 豊, 服部 寛, 大久保 雄, 赤坂 清和
    2023 年 23 巻 1 号 p. 75-80
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/20
    ジャーナル フリー

    変形性膝関節症の理学療法について,現在世界で発行されているNational Institute for Health and Care Excellence 2022(NICE 2022),American Academy of Orthopaedic Surgeons 2021(AAOS 2021),The Department of Veterans Affairs and Department of Defense Evidence-Based Practice Work Group 2020(VA/DoDEBPWG 2020),Osteoarthritis Research Society International 2019(OARSI 2019),American College of Rheumatology and the Arthritis Foundation 2019(ACR/AF 2019)の5つの主要な診療ガイドラインの推奨度を整理,比較した。教育と自己管理,運動を実施することは強い推奨,あるいは中等度の推奨であった。温熱または寒冷療法,経皮的電気刺激療法,装具や杖の使用,鍼,マッサージ,レーザー,瞑想,太極拳,ヨガ,行動療法はガイドライン間で推奨が一致していなかった。今後は,対象者特性の違いによる理学療法の有効性を調査するために症例レジストリシステムを構築し,多施設共同研究を充実させることが求められる。

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