抄録
自然分布の北限を遙かに越えた静岡県南伊豆町に生存する、マングローブの一種「メヒルギ」が河川改修工事のために移植を余儀なくされた。自然に優しい建設事業が叫ばれる中、人の安全確保のための公共事業と自然が共生するための試行として注目されている。 移植後のメヒルギは、保護管理を受けながらも徐々に衰退し、結果的に活着率は40%台であった。自然の林相を保っていることは、各々の木が集団で安定な状態を維持しているので、移植工事の方法が如何に丁寧であっても、安定な林相を築き上げるまでは厳しい環境圧に常に曝し続けられ、被害を受け続ける可能性があることが示唆された。