気象集誌. 第2輯
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極成層圏雲の2つの段階:南極成層圏の温度とライダーで観測された粒子状物質の後方散乱係数
岩坂 泰信林 政彦
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1991 年 69 巻 1 号 p. 71-81

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抄録
南極昭和基地(南緯69度00分、東経39度35分)で、ふたつの異なる種類のエアロゾル層の存在が、冬の成層圏エアロゾル増大時期に観測された。これらのエアロゾル層を構成する粒子の代表的なものは、それぞれ硝酸3水和物及び氷の結晶と考えられ、従来から存在が仮定されていたタイフ。1-PSCsとタイフ。II-PSCsに対応すると思われる。また、時間的な変化から考えると、初期のエアロゾル層が硝酸3水和物を主体とするものであり発達期のものが氷からなるPSCに相当していたと思われる。しかし、エアロゾル層の構造を詳しくみると、必ずしもこのような単純な区分が成立しているわけではなく、異なるPSCs粒子がそれぞれ層をなして混在していることが予想される。もっとも典型的な例は、初期のPSCsに時々みられる偏光解消度のきわめて高い部分の存在である。
PSCs粒子が出現しうる領域を調べてみると、厳冬季には氷粒子の出現可能な領域が対流圏界面直上まで広がることが予想され、PSCs粒子が対流圏まで重力沈降していきやすい環境が出来ている(落下途中の蒸発がないため)。このようなことがあれば、PSCsの発生は、粒子状物質及び関連する気体成分の成層圏から対流圏への輸送やオゾンホール形成などに大きな影響を及ぼすことになる。
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© 社団法人 日本気象学会
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