抄録
目的:本研究は、介護保険施設に入所する高齢者における入院、死亡に低栄養は関連すること、さらに、低
栄養と関連するミールラウンドによる観察項目を検討することを目的とした。
方法:日本健康・栄養システム学会認定臨床栄養師がいる、あるいは認定臨床研修施設である35介護保険施
設(特養22施設、老健13施設)の入所高齢者1,646名が対象として登録された。平成25年10月~12月のベース
ライン時のBody Mass Index(BMI)やミールラウンドによって観察された状況、さらに1年間の入院、死亡
の発生日を追跡した。ベースライン時のBMI18.5kg/m2未満を低栄養とし、1年間の入院、死亡発生との関連
をCox 比例ハザード分析により検討した。また、ベースライン時のミールラウンドによる観察項目(全35項目)
と低栄養との関連をロジスティック回帰分析(ステップワイズ法)によって検討した。
結果:ベースライン時には524名(31.8 %)に低栄養が認められ、その後、1年間の入院に対するハザード比
は1.28 [CI : 1.02-1.59,p=0.028]、死亡に対するハザ-ド比は1.84 [CI : 1.41-2.40,p<0.001] であった。ベー
スライン時のミールラウンドによる観察項目のうち、【噛むことが困難である】、【硬い食べ物を避け、軟らかい
食べ物ばかり食べる】、【食べるときに下顎が出る】、【興奮・大声・暴言・暴力】、【失行】が独立した要因として、
低栄養と関連した。
結論:低栄養は入院や死亡のリスクを高めることから、低栄養に関連する要因をミールラウンドにより把握
することが重要である。
キーワード:高齢者、低栄養、ミールラウンド、入院、死亡