自然災害科学
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小学生を対象とする防災教育の効果の持続性と家庭への波及:沿岸部と内陸部の比較
保田 真理齊藤 玲邑本 俊亮
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2021 年 40 巻 S08 号 p. 125-142

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抄録
本研究の目的は,防災教育の効果の持続性を調べるとともに,防災教育の家庭への波及を促進する要因について明らかにすることであった。防災出前授業が,宮城県と福島県の15の小学校(沿岸部6 校/内陸部9 校)で, 5 年生(10歳~11歳)児童を対象として実施され,児童の防災意識や家庭での行動に関して,質問紙による調査が行われた。結果は以下の通りであった。a)ほとんどの調査項目において,授業前から授業後に得点が上昇したものの, 1 か月後には得点が下降していた。b)「居住地の災害発生リスク評価」については,沿岸部でのみ,授業によって上昇した得点が1 か月後にも持続していた。c)全般的に沿岸部のほうが内陸部よりも得点が高かった。d)防災教育の家庭への波及は,防災に関する学習意欲,減災の自己効力感,および災害時の家族の適切な行動の予測とポジティブに関連し,災害に対する恐怖心は負の影響をもたらしていた。これらの結果は,防災教育を継続的に行うことの重要性と,内陸部の子どもたちに対する介入の必要性を示唆している。さらに,防災教育の効果を家庭へ波及させるための要因ついて議論された。
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© 2021 日本自然災害学会
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