抄録
伊勢湾台風を契機として1961年に制定された災害対策基本法では,「防災」を「災害を未然に防止し,災害が発生した場合における被害の拡大を防ぎ,及び災害の復旧を図ることをいう」と定義している。図1 に示すように災害対策基本法が施行されてから,1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災までは,千人以上の死者・行方不明者を出した災害は発生していない1)。つまり阪神・淡路大震災は,大規模な被害が出た災害において「被害の拡大を防ぐこと」「災害の復旧を図ること」をどのように実現するかについて,大きな課題を与えた災害といえる。特に,情報通信技術(Information Communication Technology:ICT)については,1961年から1995年までに大きな進化を遂げており,阪神・淡路大震災において,その可能性の一端を示している。本稿では,情報処理技術の進展と期待される災害対応への適用の可能性について解説する。