抄録
本稿は,学齢期の子どもとその家庭が災害時に直面する困難を明らかにすることを目的とし,被災地域に住む保護者に対して特に災害直後に関して実施したインタビュー調査のデータを分析した。その結果,発災後は保護者と子どもの距離が接近したり,子どもの居場所がなくなったりすることによる困難が生じていた。具体的には,保護者は精神的負担の増加のほか復旧作業の進行に困難を感じていたことに加えて,子どもは遊ぶ権利が侵害されていた。また,保護者が子どもと長時間ともに過ごさざるを得ない状況となることは,保護者が子どもと余裕をもって接する時間を創ることも難しくしていた。最後にそうした困難を軽減するための支援方策として,子どもの居場所に着目して考察を行なった。子どもが保護者の手から離れることができる託児機能や,周囲の目を気にすることなどによる制限がない遊び場の機能が災害時の子どもの居場所には求められることを指摘した。