2012 年 5 巻 3 号 p. 195-201
【目的】FilterWire EZ(FWEZ)を用いた頚動脈ステント留置術(carotid artery stenting;CAS)中にno flowとなり,脳梗塞を来した1例を報告する.【症例】78歳,男性.右大脳半球に陳旧性脳梗塞を伴う進行性右内頚動脈狭窄に対してCASを施行した後,無症候性ながら進行する左内頚動脈狭窄に対してCASを追加した.FWEZを用いたdistal protectionを行い,ステント留置後に後拡張を行ったところno flowを来した.直後より,意識レベルの低下,失語,右片麻痺を呈し,術後のMRIでは左大脳半球に散在する脳梗塞を認めた.【結論】FWEZは効果的な遠位塞栓予防デバイスであり,従来のフィルタータイプのデバイスより優れていることが報告されているが,本デバイスを用いた場合にも本例のようにno flowを来し,症候性脳梗塞が起こり得ることを認識する必要がある.