抄録
【目的】右内頚動脈狭窄に対しproximal およびdistal protection併用下に頚動脈ステント留置術(carotid artery stenting;CAS)を施行し,右網膜中心動脈閉塞を発症した1例を報告する.【症例】74歳男性.意識消失発作を主訴に来院し,明らかな梗塞は見られなかったが,第2頚椎下縁よりも高位におよぶ右内頚動脈狭窄と脳血流負荷シンチにて右大脳半球の脳血流予備能低下を認めたため,同部に対しCASを施行した.総頚動脈に留置したバルーン付きガイディングカテーテルを用いたflow reversal法と内頚動脈遠位部に留置したFilterWire EZを併用し,CASを問題なく施行できたが,CAS直後より右視力低下を訴え,翌日の眼底検査にて右網膜中心動脈閉塞を認め,その後も改善は見られなかった.【結論】CASに伴う網膜中心動脈閉塞は稀だが,入念なプロテクションを行っても起こり得る重篤な合併症として常に認識しておくべきと考えられた.