2018 年 67 巻 4 号 p. 402-412
地域包括ケアシステムでは,住宅,保健,医療,介護,福祉などの生活支援サービスが日常生活の場で提供できるような地域の体制を確立することが目指されている.保健師は,これまでから地域の保健,福祉,医療などに関わる業務を担う専門職として活躍してきた.したがって,新しい地域包括ケアシステムにおいても保健師に対する期待は大きい.
そこで,本稿では,先行研究や保健師に関する調査報告,さらに行政資料などを検討することによって,今日の保健師の実情を確認する.その上で,公共政策研究に依拠し,地域包括ケアシステムにおける保健師の役割を明らかにすることを目的にしている.この目的のために,保健師の中でも特に市町村保健師に焦点を合わせている.
市町村においては,保健師は多様な組織に所属し,多分野の業務に従事している.今日では,分野横断的な業務を担うことが保健師の特徴であると言える.文字通りの第一線職員(street-level bureaucrats)として,地域社会の日常生活に関する政策の実施を担っている.同時に,政策形成に対する保健師の貢献にも期待が高まっていることも明らかになった.
結論として,地域包括ケアシステムにおける保健師の役割を 3 点に集約した.第 1 は,地域に精通した専門家として,保健,福祉,医療,介護などの専門職間のコーディネートを行うことである.第 2 は,ケアに関わる自治体の様々な部署を,組織横断的に連携させるための要の役割である.そして第 3 は,ケアに関する施策や事業を企画・立案するとともに,自治体の政策形成全般に関わることである.すなわち,地域の実情や実態,住民ニーズについての情報を自治体政策に反映させる役割である.保健師が,これら 3 つの役割を果たすためには,専門職(スペシャリスト)としてだけではなく,ジェネラリストとしての能力を高める必要がある.また,実施だけでなく政策形成の能力を高めることも求められている.