保健医療科学
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特集
日本の難病に関する研究開発の動向
研究開発管理における国立保健医療科学院の貢献
武村 真治曽根 智史
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2019 年 68 巻 1 号 p. 45-54

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抄録

本稿では,日本の難病に関する研究開発の歴史を概観するとともに,国立保健医療科学院のこれまでの難病研究への関与と貢献,そして今後の取り組みについて論述する.

日本の難病に関する研究開発は,1972年から,国の難病施策の指針の「難病対策要綱」にしたがって実施されてきた.この要綱では「調査研究の推進」が難病施策の第一に掲げられており,基礎研究,臨床研究,疫学研究など,幅広い調査研究が推進されてきた.しかし調査研究が広範であるがゆえにその目標は明確ではなく,また諸外国と異なり,必ずしも希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)の開発に重点が置かれたわけではなかった.難病に関する研究課題(研究プロジェクト)は,主に厚生労働省の資金提供による「厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業)」で実施されてきた.2009年度に事業予算が100億円に大幅に増額されたことを受けて,調査研究を「研究対象疾患の網羅的な拡大」と「画期的な医薬品等医療技術の開発・実用化の推進」の 2 つの方向性で拡充することとなった.またその方向性にしたがって研究事業を円滑に運営するために,2010年度より国立保健医療科学院が本研究事業に係る研究費配分機関(Funding Agency:FA)となり,研究課題の目標の明確化,研究事業(研究プログラム)の管理システムの構築を行った.その結果,これまでほとんど調査研究が実施されてこなかった多くの難病で疾患概念の確立と診断基準の策定がなされ,また複数の医薬品・医療機器で治験の完了や薬事承認を達成することができた.

2014年の「難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法)」の制定,2015年の日本医療研究開発機構(AMED)の設立によって,難病に関する研究開発の枠組みは大きく変化した.つまり,これまでの難治性疾患克服研究事業が「難治性疾患政策研究事業」と「難治性疾患実用化研究事業」に分割され,国立保健医療科学院は前者のFAとして,難病法に基づく医療費助成制度や難病医療提供体制を支える科学的基盤である診断基準,重症度分類,診療ガイドラインの確立を進めることとなった.

国立保健医療科学院は,2014年度から,新たな研究事業の管理システムを構築し,運用している.具体的には,(a)研究事業の目標を,診断基準,重症度分類,診療ガイドラインが策定・改訂された疾患数,及びそれらが関係学会で承認された疾患数の最大化に設定したこと,(b)各研究課題に,研究対象とする各疾患に関して,「診断基準」,「重症度分類」,「診療ガイドライン」のいずれか,あるいは全てについて,「策定・改訂」,「学会での承認」のいずれか,あるいは両方を目標として設定させたこと,(c)各研究課題に「研究成果申告書」を毎年提出することを義務づけ,進捗管理と研究評価を徹底したこと,などが推進された.その結果,2017年末までに,多くの難病の診断基準,重症度分類が策定・改訂された(582の対象疾患の85%,78%).しかし一方で,診療ガイドラインの策定・改訂は半数にとどまり,今後は研究課題が「自ら」目標を設定するだけでなく,「研究事業の方針に従って」適切な目標を設定できるよう支援する必要がある.

国立保健医療科学院は,今後も難病研究のFAとして,難病政策に資する多くの研究成果を上げるために,難治性疾患政策研究事業の目標管理,進捗管理,成果管理を積極的に行っていくつもりである.

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© 2019 国立保健医療科学院
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