保健医療科学
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特集
日本のアカデミアにおけるCDISC標準の活用とその意義
木内 貴弘
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ジャーナル オープンアクセス

2019 年 68 巻 3 号 p. 202-211

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抄録

CDISC標準の概要:CDISC標準は,当初は治験の電子申請のために策定されたが,現在では,電子化された臨床研究のあらゆる場面で活用可能なように規格が拡張されている.FDAとPMDAによる治験電子申請のCDISC標準の利用の義務化によって,世界の製薬会社がCDISC標準に取り組んでいる.しかしながら,CDISC標準を活用して,EDCや電子カルテからのデータ抽出等の先進的なプロジェクトを実施するのには,規制の関係から,製薬会社よりもアカデミアが適している.

日本のアカデミアにおけるCDISC標準の利活用の過去の実績と現状:CDISC標準自体は米国を中心に策定された規格であるが,日本のアカデミアは,CDISC標準の利活用では,過去において,むしろ米国に先行してきたことに注目すべきである.UMINと福島県立医大によるCDICS標準にもとづくEDCによる本物の臨床試験の世界初の実施,静岡県立がんセンターによるCDISC標準による電子カルテからの世界初のデータ抽出等の試みは,特に顕著な例である.過去の顕著な実績にもかかわらず,医学研究データ収集におけるCDISC標準の活用がその後幅広く,日本で一般的になったとは言えない.日本では,臨床試験電子化の規格として,かつて中間標準という規格が策定されたが,英文による普及・広報活動とそれによる海外での仲間づくりの努力をしなかったため,CDISC標準にまったく太刀打ちできなかった.そして,中間標準を策定した人たちが日本におけるCDISC標準の導入に抵抗した経緯がある.また中間標準の採用が実際的でないと明らかになると,今度は診療用に策定された日本独自の規格であるSS-MIXを臨床研究のデータ収集に使うことが広く行われている.

日本におけるCDISC標準利活用の今後:規格を策定するならば,英文による普及・広報活動を強力に実施して,国際標準を目指すこと,国際標準にできなかった規格はすぐにあきらめて,国際標準に乗り換えることが重要である.医学研究のデータ収集,電子カルテからのデータ抽出のデータ仕様は,CDISC標準に統一していくことが必須であると考えられる.これらの推進は,規制による制約のないアカデミアが主導すべきであると考える.

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© 2019 国立保健医療科学院
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