保健医療科学
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論文
熊本地震における要配慮者に対する保健医療・福祉分野の災害対応に関する課題と対策
質的研究を通して
高杉 友梅山 吾郎島崎 敢横山 由香里原岡 智子池田 真幸岡田 栄作尾島 俊之
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2020 年 69 巻 3 号 p. 296-305

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抄録

目的:大規模地震では,高齢者や障害者などの要配慮者が多く被災している.災害発生時に要配慮者に対し,保健医療・福祉分野の取組みを行い,被害を軽減することは重要である.本研究では,2016年の熊本地震において,要配慮者に対し,保健医療・福祉サービスまたは情報の提供を行った行政機関や福祉関連機関等へのインタビュー調査による質的研究を通して,保健医療・福祉分野の災害対応に関する課題と対策を整理することを目的とした.

方法:2018年 8 月末~2019年 2 月末の間に半構造化面接による質的研究として実施した.対象機関は,熊本地震で要配慮者に対し,保健医療・福祉サービスまたは情報の提供を行った行政機関,福祉関連機関,教育機関,情報機関,国際交流機関とした.調査項目は,災害時の要配慮者への安否確認,保健医療・福祉サービスに関する情報共有・支援提供,他部署及び他組織との連携状況,一般避難所及び福祉避難所の 4 点に関する実態・課題・対策である.テーマ分析を行い,要配慮者に対する保健医療・福祉分野の災害対応に関する課題と対策に関する部分を抽出し,コーディング,カテゴリー化を行った.

結果:研究対象者は行政機関や福祉関連機関等の12対象機関・部署における管理的立場の者,保健師・訪問看護師・社会福祉士などの専門職等の20名だった.要配慮者に対する保健医療・福祉分野の災害対応に関する課題と対策に関する 4 テーマ【行政機関内の対応】,【行政機関・民間組織・住民等の対応】,【自助】,【福祉避難所】が抽出された.課題は[情報共有体制の脆弱性],[行政機関職員のマンパワー不足],[公助・互助・民助の役割分担が不明確],[自助が不十分],[多様な要配慮者のニーズ把握の欠如],[福祉避難所数の不足]の 6 サブテーマ,対策は[他組織・部署間の情報共有・連携強化],[外助の活用],[互助・民助の活用],[自助強化の支援],[要配慮者のニーズに合った福祉避難所の設置],[一般避難所の要配慮者受入れ],[多様な避難場所の提供]の 7 サブテーマに分類された.

結論:本研究で確認されたラジオ局等の情報機関を含めた行政機関・民間組織・住民等との連携,被災地域外からのタイムリーな後方支援システムの構築,要配慮者のニーズに合った避難所や避難場所の設置が,今後は他の地域においても推進されることが期待される.

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© 2020 国立保健医療科学院
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