採血が唯一の侵襲となる人に対する医学研究について,倫理指針上では通常の採血は軽微な侵襲として扱われるため,倫理委員会による迅速審査が可能な範囲で,倫理指針上では合併症への補償保険の加入も求められていない.また,一般に利用されている臨床研究保険では採血による合併症は医療行為自体による合併症として免責となっている.そのため,臨床部門以外の研究主体が行う研究では,実際に採血合併症が生じた場合には,臨床研究保険の利用による賠償や補償ができない状況である.一方,献血においては「献血者健康被害救済制度」が確立しており,医療費や医療手当(治療による医療費以外の費用の負担に対する)の支払いや,採血合併症への賠償・補償への対応がなされている.それを参考に採血が唯一の侵襲となる医学研究についても,合併症が生じた際に,医療費や医療手当の支払い,さらに必要があれば賠償について確実に研究主体の責任で行えるようにすべきと考えられる.そのためには,臨床研究保険において採血が唯一の侵襲となる医学研究についての保険が設定されることが望まれる.さらに,倫理委員会でも採血合併所の際の補償や賠償の必要が生じた際の対応について,一般には臨床研究保険加入の必要性と,侵襲の程度により審査がなされていると考えられるが,研究主体による採血合併症治療への医療費自己負担分の支払いの有無とその財源,賠償責任発生時の医師賠償責任保険の利用がどのようになされるかについてしっかり審議を行うことが必要と考える.