保健医療科学
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特集
持続可能な開発目標モニタリング指標における日本の母子保健の向上とその指標の限界
大澤 絵里 児玉 知子
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ジャーナル オープンアクセス

2021 年 70 巻 3 号 p. 242-247

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抄録

2015年に,国連総会にて批准された2030年を目標達成年にした「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals, 以下SDGs)」では,目標 3 に「健康的な生活の確保し,福祉の推進」が掲げられた.ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals)の残された課題とされた母子保健は,妊産婦死亡,5歳未満児・新生児死亡,若年出産,加えて全ての人に財政リスクを負わず質の高い保健サービスへのアクセスを目指すユニバーサル・ヘルス・カバレッジの中の必須保健医療サービスとして家族計画,産前ケア,小児予防接種,子どもの肺炎治療へのアクセスの目標が設定された.これら多くの目標は,日本においては既に達成している目標である.特に,妊産婦死亡や子どもの死亡については,1900年以降,母子の健康状態を把握するための農村衛生調査の実施,地域住民による母子支援活動の母体である愛育会の発足,市町村母子健康センターによる施設内分娩,健康教育の促進により,母子の健康の改善が図られた.今回,SDGsの母子保健の指標については,産前ケアへのアクセス,小児の肺炎治療の指標は日本でもプライマリデータを保有,公表がされておらず,SDGsの母子保健における指標に対するデータ収集の限界もあることも明らかとなった.加えて,これらの目標や指標は,日本の母子保健の現状やその改善にとって適切な指標とは言い難く,日本において,SDGsの「誰一人とり残さない」という理念への達成を目指すことはできない.SDGsの母子保健の目標は,日本にとっては過去のこととはとらえず,現在の母子保健の課題や取り組みを,「誰一人とり残さない」というSDGsの理念と結び付け,国際的に発信していくことが求められる.

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© 2021 国立保健医療科学院
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