保健医療科学
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特集
将来の費用負担予測を元にした小規模な水道への対応
木村 昌弘浅見 真理
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2022 年 71 巻 3 号 p. 216-224

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抄録

人口減少等により,小規模な水道事業の維持は大きな課題の一つであるが,給水人口が100人以下の飲料水供給施設等(以下,小規模水供給システム)にあっては,影響が特に大きく,飲料水を含む生活用水を供給する水道の施設・財政・維持管理・衛生確保の様々な面で多くの問題を抱え,水道の維持が困難となりつつある.

また,人口 5 千人以下の過疎町村にある水道では,事業環境や運営基盤も厳しいことに加え,事業をすべて統合しても上水道事業にはできない.現在,給水人口が101人以上の簡易水道事業でも,近い将来給水人口が100人以下となる事業が確実に増加することから,小規模な水道が抱える課題はより広範囲に深刻化することになる.

本研究では,特に事業環境が厳しい全国の簡易水道の中から選定した事業において,近接した 3 集落の独立した小規模水道をモデル地区として,施設統合や運搬給水など様々なシステムや多様な給水形態を導入した場合について,今後60年間の経営シミュレーション等を行った.これらの結果を基に一人一月当たりの平均費用負担額を評価基準として,今後の給水システムについて施設統合や自立分散型,運搬給水や非飲用水給水の導入などの優位性を評価し,今後これらの地区で導入すべき最適なシステムについて検討した.こうした評価手法が他の多くの小規模水道の今後の最適なシステムや給水形態につての検討に利用できるよう,簡易で汎用的な評価手法を検討し,今後の小規模水道のあり方について考察した.

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© 2022 国立保健医療科学院
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