保健医療科学
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小規模集落が経営する水供給システムの維持管理作業の支援ニーズと展望
増田 貴則 堤 晴彩
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2022 年 71 巻 3 号 p. 241-253

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抄録

水道法の規制対象外とされる計画給水人口が100人以下の小規模な水道が全国に多数存在している.これらは集落の住民自らが施設等の管理運営を行なっているが,高齢化や人口減少の進展,施設の老朽化等により,施設等の維持が困難になりつつあると懸念されている.これらのことを踏まえて筆者らは,水供給施設の持続可能な維持管理の在り方の一つの道筋として,行政やNPO法人等の集落外からの協力による維持管理を提案し,水供給施設の実態を把握するとともに,集落外からの維持管理による支援方策の実現可能性について検討してきた.

西日本の 1 府11県の小規模水道を対象とし,質問紙調査を実施した結果,地下水に次いで表流水が多く利用されていることがわかったが,塩素消毒なしで表流水を利用している集落も多く,衛生安全性の面から懸念が残った.また,約66%の集落で水が使用できなくなるようなトラブルがかなりの頻度で発生しており,給水の安定性といった面からも脆弱さが懸念される.施設の維持管理作業において負担感が大きい項目は,取水設備の点検・清掃,ろ過池作業,作業場までの移動といった日常時の維持管理作業に加え,停電・断水時や水圧低下時の対応など非常時の対応についても負担の重い作業であることがわかった.

集落外との連携状況とその支援の利用意向を把握するために,追加で質問紙調査を行った結果,集落外の団体と連携したことのない集落は約 8 割であった.また同調査にて, 8 つの架空の支援策を紹介し,それらの支援策が集落外の団体から有償あるいは無償にて提供される場合に利用したいかを尋ねた結果,いずれの場合も一定数の集落が利用したい意向を持っていることがわかった.加えて,集落外の外部団体からの支援を利用することへの抵抗感が高いわけではないことも確認できた.

少数ではあるが地方自治体の中には積極的な支援を行っているケースやNPO団体を活用しているケースがあることがわかった.国が最近創設した特定地域づくり事業共同組合制度は,人口急減地域の小規模水道の作業を支援する枠組みとなる可能性がある.今後は,支援の可能性をもつ団体に対して意向を調査すること,ならびに活用できそうな国の支援制度等を併せて検討していくなどにより,外部団体の協力によって小規模な水供給施設を維持するための,その実現可能性を高めていく必要があると考えられる.

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© 2022 国立保健医療科学院
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