保健医療科学
Online ISSN : 2432-0722
Print ISSN : 1347-6459
ISSN-L : 1347-6459
特集
海外における小規模水供給施設の実態と課題
小熊 久美子
著者情報
ジャーナル フリー

2022 年 71 巻 3 号 p. 234-240

詳細
抄録

公共水道を利用できない地域において,いかに安全な水を安定的に供給し,さらに将来にわたり持続的に維持するかは,国内外を問わず重要かつ喫緊の課題である.大規模な公共水道だけで世界にあまねく安全で持続的な水供給を実現するには相当の時間とコストを要し,社会経済的に合理性を欠くことから,小規模な施設で分散的に水を処理し供給するシステムの活用が有効である.本稿では,小規模分散型の水供給システムのうち,特に集落規模で運営と維持管理を担う施設に焦点を絞り,筆者が見聞した海外での事例として,カナダの遠隔地およびスリランカの農村地域における水供給の実態を紹介する.

カナダでは,一部の大都市に人口が集中する一方で遠隔地では極めて低密な居住実態があり,そのような地域には集落単位で運営する小規模な水供給施設が相当数存在する.それらの施設では水質に課題があるケースが散見され,煮沸勧告など水利用を制限する勧告が 1 年を超えて継続的に示されている施設も複数存在する.遠隔地に多いカナダ先住民の生活支援策という観点でも小規模水供給施設を重視するカナダ政府の基本方針,また集落規模で運営する施設の維持管理の実態について,ブリティッシュコロンビア州の事例を中心に報告する.一方,スリランカでは,北部中央地域でまん延する原因不明の慢性腎臓病が飲用する地下水に由来するとの仮説を踏まえ,国家プロジェクトとして逆浸透(RO)膜ろ過を備えた集落規模の水供給施設を導入してきた経緯がある.それら施設の運営実態や維持管理の課題について,現地32施設を訪問調査した結果をもとに報告する.最後に,これら 2 カ国の事例紹介を通じて,小規模水供給施設の実態と課題を総括する.

著者関連情報
© 2022 国立保健医療科学院
前の記事 次の記事
feedback
Top