2022 年 71 巻 3 号 p. 254-263
経営統合や広域連携による経営効率化が喫緊の課題となる中,北海道のように空間的分散性の高い地域においては,統合や連携による経営効率化だけでは,解決が難しい状況もみられる.こうした場所では,第 3 の選択肢として,従来の枠にとらわれない経営主体,日常の維持管理主体の再編が必要と思われる.本稿では,主に地方部の水供給システムにおける今後の一つのモデルとして,地域自律管理型を核とした新たな地方水道のしくみを,現状調査と実践的な取り組みに基づき紹介する.北海道での実態調査からは,既存の地域自律管理型水道の個々の施設や運営形態,市町村の支援体制は,それぞれ多様であることが確認された.一方で,地域自律管理型の強みと課題を整理した結果,多くの事例では,良質な水源や農家の存在を背景に,低コストで無理のない運営が実現している反面,水質リスク管理体制やアセット情報管理に課題があることがわかった.そうした地域自律管理型水道の特性を踏まえ,北海道富良野市と筆者らは,地元高校生との連携による地域自律管理型水道の支援体制づくりを行ってきた.富良野高校科学部のクラブ活動と連携し,地域自律管理型水道を対象に,水質リスク管理体制支援として簡易の水質調査,アセット情報管理支援として管路地図のGIS化,そして一連の成果の報告会を実施してきた. 5 年間の実践を通じてわかったのは,高校生の作成した情報は地域にとって十分価値あるものになるということ,地元高校は地域にとって次世代の担い手を育てる場であり,高校生が地域を知ろうとする活動は地域の活性化にも貢献しうること,水道再編に係る地域のネットワークを構築する上で,地元高校卒業生のネットワークが活用できることなどであった.また,今後同様の支援体制づくりを別の場所で展開する際に,必要と想定される人員・コストを見積もると,初期費用は約7.3万円(高校で利用可能なPCがすでにある場合),年間コストは約5.1万円,そして,筆者のような外部研究者の協力にかかる人工は 6 人日/年程度と考えられた.以上のような地元高校と連携した支援体制や,市町村による支援体制を,無理のない形で構築していくことが,今後の小規模給水システムの持続性を高める上で重要になると考えられる.