日本では,1998年の自殺者数急増を契機に,自殺問題が社会的注目を集め,自殺対策基本法の改正や自殺総合対策大綱の見直し等を経ながら,自殺対策が国を挙げて推進されてきた.また,他方では,近年,新型コロナウイルス感染症のパンデミックが始まり,国内の自殺者の動向に変化がみられている.本稿では,まず,自殺総合対策大綱の策定と見直しの変遷を概観しながら,日本の自殺対策を振り返った.次に,コロナ禍での日本国内の自殺に関わる状況を整理し,女性や子どもの自殺者数の増加といった変化がみられること,また,この背景として,女性非正規職員の問題や子どものコミュニケーションの減少等の問題が指摘されていること,さらに,コロナ禍で決定された第4次自殺総合対策大綱には,これらの課題を踏まえた対策が記載されていることを示した.自殺総合対策大綱や自殺対策の実行に関する課題としては,緊急時における迅速な対応,各施策の有効性の検討,SNS上の誹謗中傷への対応,自殺対策のプラットフォームの発展が重要である.