2025 年 74 巻 5 号 p. 488-497
目的:本研究の目的は,多様な背景を持つ新任期保健師の経験した困難と有用な支援を明らかにすることである. 方法:職業経験や教育背景,年齢等の多様な背景を持ち,中堅期保健師のプリセプターから指導を受けた経験のある新任期保健師14名を対象にした.2023年11月~2024年1月に,経験した困難と有用と感じた支援について,個別またはフォーカスグループインタビューによる半構造化面接をオンラインで行い,質的帰納的に分析した. 結果:前職の就業経験は,看護師13名,保健師5名,現職の就業年数は平均1年7か月であった.多様な背景を持つ新任期保健師の経験した困難は,【地域保健活動における視点の転換と実践の難しさ】【前職と比べた保健師業務のマネジメントの難しさ】【専門職経験者としての期待と現実のギャップに伴う葛藤】【保健師業務に必要な基盤知識の理解の難しさ】【自治体職員の役割理解と業務遂行の難しさ】【前職との地域や組織文化の違いに伴う戸惑い】であった.多様な背景を持つ新任期保健師が有用と感じた支援は,【保健師としての対人・地域支援力の育成】【前職の経験を活かした新任期教育体制】【自治体保健師としての実践力の育成】【前職の経験がプレッシャーにならない組織文化】であった. 結論:多様な背景に起因する困難として,専門職経験者としての期待と現実のギャップに伴う葛藤と,前職との地域や組織文化の違いに伴う戸惑いが明らかとなった.また,保健師職への初期適応に起因する困難として,地域保健活動における視点の転換と実践の難しさや,保健師業務のマネジメントの難しさ,保健師業務に必要な基盤知識の理解の難しさ,自治体職員の役割理解と業務遂行の難しさが示唆された.こうした困難に対する支援の在り方としては,前職経験を活かした教育体制の整備,保健師としての実践力を育むOn the Job Trainingの導入,前職の経験がプレッシャーにならない組織文化の整備が有効であると考える.さらに,人材育成においては,キャリアラダーを活用し,前職の経験を踏まえたキャリア評価とフォローアップを行うことで,能力の体系的な向上や職務満足の促進,さらには組織全体での人材育成につながることが期待される.