2017 年 3 巻 1 号 p. 57-62
高齢者に激増する認知症はQOL,生命予後に高度に影響を及ぼしており臨床上問題になっている。今回,心不全の増悪で入院し,陽性BPSD(不穏,興奮,介護への抵抗など)が顕性化し,急性期救命治療に抵抗を示した症例に抑肝散を投与することにより適切に鎮静化され,回復し得た3症例を経験した。また,陰性BPSD(全般的意欲の低下,食欲の低下など)により低栄養化し,肺炎で入院した症例に補中益気湯を投与することにより,全身状態が改善し,肺炎による再入院を回避しえた3症例を経験した。陽性BPSD,陰性BPSDに応じて適切に漢方薬を投与することにより,QOL,生命予後を改善しうることが示唆された。