1996 年 3 巻 2 号 p. 33-56
コンピュータを用いて, 文学研究を進めるための検討を行った. これには, 研究過程の中核である研究ファイルの組織化が必要で, そのモデルを定義した. モデルは研究過程で利用され, 生成される様々な情報資源の構造認識による組織化である. モデルの検証のために, 具体的な文学テーマを設定し, その実装を行い, 評価した. その試みとして電子本「漱石と倫敦」考の研究開発を進めている. 研究者による評価実験では, 概して評判がよい. 例えば, 漱石の作品倫敦塔を読む場合に, 各種参照情報を随時に利用できること, メモなどを自由に書き込むことができ, 自分の研究環境の整備がコンピュータ上で可能であることが評価されている. さらに, モデルは実際の文学研究に有効であること, とくに教育用ツールとして効果的であるとの評価が得られた.