2024 年 22 巻 p. 22-29
科学技術に関わる政策過程において専門家の担う政治的役割が多様であること,そのような役割には限界があることを,食品安全委員会,原子力規制委員会,新型コロナウイルス感染症対策専門家会議,新型コロナウイルス対策に関する分科会といった様々な事例を通して確認した.その上で,専門家レベルの裁量の適切性を確保するためには,決定に参画する異なる分野の専門家による相互のコミュニケーション,社会のステークホルダーからのインプットの確保が重要となること,専門家レベルでの幅広い分野横断的調整に限界がある場合には専門家レベルの調整と政治レベルの調整の接続が不可欠となる点を指摘した.