2024 年 22 巻 p. 30-42
科学コミュニケーション分野では,理論家も実践家も欠如モデル的思考様式とは距離をとるべきだと主張してきたが,欠如モデルという概念そのものが,科学コミュニケーションの理論構築や実践活動に混乱をもたらすものであった.そこで,本稿では欠如モデルにかわる対概念として,垂直モデル/水平モデルを用いる.垂直モデルは科学者が自文化であると認識する科学のみが自然かつ合理的な唯一の視点と考える態度で,水平モデルは科学者以外の他者の文化も認める態度になる.ただ,水平モデルは科学的価値の過度な相対化を帰結するのではないかという懸念を引き起こす恐れがある.そこで,コリンズとエヴァンズが展開した選択的モダニズムの議論を基盤にして,水平モデルが科学の相対化を必ずしももたらさないことを示す.その上で,コリンズらの専門知論とこの垂直モデル/水平モデルを用いて,科学コミュニケーターのタイプを8 つに分類する.