臓器間ネットワークとは,生体内において中枢神経を含む各臓器が液性因子や神経因子のシグナルを介して相互に影響し合い,生体内に生じた変化に対して恒常性を維持する方向で協調するネットワークのことである.近年,代謝恒常性の維持に関わる種々の臓器間ネットワークが相次いで発見され,なかでもエネルギー代謝や糖代謝に関わるものは,世界的に患者が増え続けている肥満,糖尿病やメタボリックシンドロームの治療に役立つと期待されている.本稿では,当研究室で見出された,主に中枢神経,肝臓,脂肪組織,膵β細胞を含んだ,自律神経を介した臓器間神経ネットワークについて概説する.さらに,見出した臓器間神経ネットワークの糖尿病治療への応用を目的として最近行った,光遺伝学的迷走神経刺激による膵β細胞増殖メカニズムの研究についても解説する.