経済的意思決定は,利得・価値の異なる複数の選択肢から個体の効用を最大化するような選択肢を選ぶことである.素朴に考えると効用は利得そのものあるいは利得の期待値であるが,我々人間はそのような意思決定からは乖離した行動をしばしば取る.リスク回避傾向や時間選好などの個人の持つ選好の他に,他者との関わりの中で規定される不平等回避や互恵性などの社会的選好によっても経済的意思決定は影響を受ける.本稿では,他者と分配を行う場面での経済的意思決定に注目して,社会的選好が経済的意思決定をどのように調節するかを明らかにする脳イメージングの研究について解説する.数理モデルを用いて社会的選好がどのように経済的意思決定を調節するかをモデル化する方法と,脳刺激によって経済的意思決定における刺激部位の機能的役割を因果的に示す方法について,著者が行った脳イメージング研究を題材に説明する.最後に,今後の経済的意思決定の脳イメージング研究について展望する.