日本神経回路学会誌
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解説
人工知能による人の互恵性の変化
白土 寛和
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2024 年 31 巻 2 号 p. 71-81

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抄録

人は,互恵性の規範,すなわち個人間で利益や利点を相互に交換すべきであるという社会通念を理解することにより,特定の社会的文脈に合わせて適切な行動をとることができる.また人々は,互恵性を共有することにより,他者との共存や社会的発展を可能にする.しかしながら,人工知能を搭載した機械がそうした社会生活の基盤を考慮せず,人の意思決定プロセスへ介入し始めている.本稿では,著者らが行った社会実験の結果に基づき,人工知能が互恵性に与える影響について解説する.まず,運転時に協調行動が必要とされる状況において,個人の安全を支援するシステムが,運転者間の互恵行動を抑制することを紹介する.次に,人工エージェントが互恵性の規範を考慮することにより,人々の社会的交換や協力行動を促せる可能性を,社会的ネットワークの理論およびその実験結果から示す.これらの研究を通じて,人工知能の設計においては互恵性の規範など人の社会的知性を考慮すること,また人の意思決定の研究においては社会的ネットワークの中でそのプロセスを理解することの重要性を論じる.

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