2024 年 31 巻 3 号 p. 100-115
動物が生存に適した行動をとるためには,常に意識的または無意識的に自己の運動状態(空間識)を感覚器応答から把握し,それに応じた運動制御をする必要がある.一方,そうした感覚・運動変換には通常数100ミリ秒の遅れが生じ,我々はその問題を予測機能により克服している.本稿では,空間識形成と予測的運動制御の両機能に共通に関わる小脳・脳幹神経回路の役割について,計算論と神経メカニズムの観点からこれまでの知見を総括する.また,これらの機能を人工神経回路モデルとして実現するための現状の試みを紹介する.