日本神経回路学会誌
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解説
高次相関をめぐる冒険:甘利俊一先生の京都賞受賞に寄せて
島崎 秀昭
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2025 年 32 巻 4 号 p. 189-203

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抄録

本稿は,甘利俊一先生の情報幾何および連想記憶モデルに導かれた筆者の「神経活動の高次相関」の研究の歩みを紹介する.指数型分布族による神経活動モデリングから出発した本研究は,予期せぬ発見に導かれた.当初想定したセルアセンブリ的同期活動とは対照的に,実際の神経活動では符号が交替する高次相関(2次正・3次負・4次正…)が観察され,神経集団のスパース活動を特徴づけていることが示された.この集団スパース性が神経細胞の閾値非線形性から普遍的に生じることが次第に解明され,スパースかつ幅広い活動を実現する生物の神経細胞の高次相関と現代的連想記憶モデルとの接点も浮かび上がってきた.さらに,神経細胞の非線形応答・高次相関・エントロピー/ダイバージェンスが深く結びついた統一的枠組みが,情報幾何に基づく「曲がったニューラルネットワーク」の提案によって確立された.甘利先生の視座に導かれた本研究は,外界に適応した効率的な非線形処理を自然に扱える統計モデル・空間の探究へと発展し,神経符号化および記憶機構理解に新たな地平を拓きつつある.

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