抄録
日常生活において座った姿勢から急な姿勢変化を行ったときに起きる転倒事故の理由の一部には,起立性低血圧が含まれていると考えられる.事故予防策として,人が立ち上がるときに「声掛け」をすることが予期調節として循環動体に効果を及ぼすかどうかを調べた.8人の健康な成人(19~23歳の男女各4名,平均身長163±2cm,体重58±4kg)を対象に,異なる高さの椅子(20cmと40cm)で立ち上がってもらい,持続的に循環動体と脳血流量を計測して,事前の声掛けの有無による指標の差異を調べた.その結果,心拍数と血圧,脳血流量には,椅子の高さにかかわらず声掛けの有無による有意差はみられなかったが,交感神経の活動には有意差がみられた.これは,循環動態の急激な変化を補償する反応であることを示唆している.一方,予告の有無にかかわらず,椅子の高さが20cmのときは40cmのときより有意に起立直後の心拍数が上がり,血圧が低下し,脳血流量が低下しており,低い位置からの立ち上がりが循環動態に対してより強い負荷をかけたことを示した.