日本鉱物学会年会講演要旨集
日本鉱物学会2004年度年会
セッションID: k02-02
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ゼオライト水の水蒸気圧測定による評価
*溝田 忠人坂田 渉
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抄録

これまで,主として,ゼオライトヒートポンプに用いる吸着剤の評価を目的に,ゼオライト水のエネルギー的評価を断熱型水蒸気水和熱量計で評価してきた.この方法においては,水和量の評価には,容器ごと重量を測る方法をとった.これは,所定温度で脱水した後,水蒸気水和に伴う発熱を直接測定するものであり,いわゆる積分水和エンタルピーが測定される.多くのゼオライトを構造を破壊しない程度に脱水し,水和させた所,例えば100℃で真空脱水した場合-65_から_-60kJ/molが得られている.この方法により,水和量の異なる状態におけるゼオライト水の評価のためには,脱水状態の異なる試料の水和熱測定,または,段階的な水和に伴う水和熱測定が必要であるが,何れにせよ,水和状態をコントロールすることは難しく,また,熱量測定は可能でも,水和量の評価が困難である. ゼオライトの各含水状態における水和エンタルピー(微分水和エンタルピー)を求めることができれば,より詳細にゼオライト水の状態を解明することにつながる.ここでは,磁気浮上天秤(日本ベル)を用いて,水蒸気圧_-_温度の関係を求め,得られた関係を解析してゼオライト水のエネルギー状態を解明する事を試みた.試料0.5-1gをステンレスバケットに秤量し,加熱オイルを循環するパイプによる温度コントロール可能な真空室内に吊り下げ,上部を磁気結合によって隔絶された天秤と結合する.水蒸気圧は,凝縮を回避するため高い温度に保たれた導管により,水溜に接続することにより,この水溜の精密な温度コントロールによって制御される.磁気結合を外すと,ゼロ点が秤量されるので,ゼロ点ドリフトの無いセミミクロ天秤である.この方法では,各水蒸気圧の測定が平衡状態に近いと考えられる.磁気浮上天秤は,磁力結合によって天秤と試料を結合する結果,水蒸気を天秤内部に導入する必要が無く,水蒸気の特徴である凝縮による問題を回避出来る.しかし,長期に渡る実験の間機密性を保って温度変化させながら試料の重さを測定することは容易でない.これまで,A型ゼオライト,Y型,ベータ型ゼオライト等の測定を行ったが,比較的脱水率の低い状態しか測定できていない.それによると,脱水率の低い状態では,明らかに,絶対値で比較するとこれらの物質の水和エンタルピーは,水の凝縮エンタルピー(ー44kJ/mol at 25℃)より少し大きい.また,細孔径の大きな物質の水和エンタルピーはより水の凝縮熱に近い.これらの結果より,各水和状態におけるゼオライト水のエントロピーが求まる.水や氷の状態が,純粋な水素結合による凝縮系と考えると,ゼオライト水には,余分な場(水素結合相互作用以外)を考える必要がある.第1に考えられるのは,交換性陽イオンの存在による静電場の影響である.狭い空間における水分子双極子を仮定して,そのエネルギーを評価出来るので,水和エンタルピーの値はそのエネルギーを直接測定していると考えられる.第2には,水の凝縮密度による,氷構造より密な構造を採れるかどうかという問題があるが,エネルギー的には,静電場のモデルだけで十分説明つきそうである.

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© 2004 日本鉱物科学会
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