原子力バックエンド研究
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研究論文
アルミニウムからのガス発生挙動に与える鉄との接触の影響
橋爪 修司松本 潤子馬場 恒孝
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1998 年 5 巻 1 号 p. 45-49

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抄録
  原子力発電所から発生する不燃の固体状の低レベル放射性廃棄物は,ドラム缶内にてセメント系充てん材により固型化される計画である. 固型化後,六ヶ所低レベル放射性廃棄物埋設センターにおいて浅地中処分が実施される. モルタルのような高pH環境中で,固体状廃棄物中のアルミニウムは腐食して水素ガスを発生することが良く知られており,ガスの発生は充てん固化体の浸出性に影響を与える可能性が高い. アルミニウムは,固化状廃棄物から除くよう計画されているが,実際には微量のアルミニウムが混入する可能性が高い. 著者らは既にアルミニウムの腐食度とガス発生量に与えるpH,温度の影響が大きいことを明らかにした. また,1 molのアルミニウムの溶解に対して1.5 molの水素ガスが発生する反応は,60℃以下で成立することを明らかにした. 実際の放射性廃棄物のドラム缶内の収納を考慮すると,混入するアルミニウムは鉄が主成分の炭素鋼と接触する可能性が大きいので,アルミニウムからのガス発生挙動に与える鉄との接触の影響について検討した. その結果,モルタル模擬環境中でアルミニウムが鉄と接触すると腐食は増加するがガス発生は極めて抑制されることが明らかとなった. この原因は,アルミニウムが腐食する際のカソード反応が鉄との接触により水素発生反応から酸素還元反応に変化したためと推定され,環境中の溶存酸素の存在が鉄と接触したアルミニウムの腐食およびガス発生挙動に大きく影響を与える.
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© 1998 一般社団法人日本原子力学会 バックエンド部会
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