有機農業研究
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【技術論文】
自然観察力を涵養するための自然暦および生物季節に関する研究:風土適応型の有機栽培技術の構築に向けた重要な視点
加藤 孝太郎田渕 浩康木嶋 利男
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2015 年 7 巻 2 号 p. 42-50

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抄録

現代における風土適応型の有機栽培技術の構築には自然観察力を養うことが重要であるとの視点から,わが国の先人による自然観察の記録である自然暦の中から農作業に関するものを抽出,調査するとともに,各地の気象台で観測された近年のデータとの比較・検討を行った.まず,昭和期に記録された農業に関する182の自然暦について調査したところ,農業に関する自然暦は全国各地に存在しており,その大半はコメを中心とする穀物に関する自然暦で,これら作物ごとでは播種や定植などの作業に関する自然暦が半数以上を占めていた.花,鳥,樹木(花以外)を指標とする自然暦は全体の67.7%を占めた.花の中では,サクラ,コブシ,フジの開花が指標となった自然暦が46.9%を占め,これらは主にコメ,サツマイモ,アサ,ナス,ダイズ,ヒエ,アワ,ワタの播種の指標であった.鳥の中では,カッコウ,ツツドリ,ホトトギスの鳴き声が指標となった自然暦が58.5%を占め,これらは主にダイズ,アワ,コメ,ヒエ,キビ,アズキ,アサの播種,チャとムギの収穫の指標であった.樹木(花以外)の中では,イチョウの黄葉およびカキの若葉の大きさが指標となった自然暦が26.3%を占め,それぞれムギの播種およびダイズとゴボウの播種の指標であった.次に,全国の10気象台が59年間観測したデータから,日最低気温の変動幅,終霜日と生物季節観測日の平年値を算出した.自然暦と重複していた生物季節であるノダフジの開花およびカッコウの初鳴について,生物季節観測日の前後30日の日最低気温を解析したところ,両生物季節の観測日より前は霜害に遭う危険性が高いことが示された.すべての気象台において,これら生物季節観測日の平年値は終霜日の平年値より後であり,さらに生物季節観測日と終霜日の年次比較により,カッコウの初鳴の方が春期の晩霜害を回避できる可能性が高いことが示された.

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© 2015 日本有機農業学会
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