抄録
78歳女.初診4か月前に右環指を屋外でネズミに咬まれた.咬傷が難治で滲出が持続した.抗菌薬内服と抗真菌薬外用で改善せず,前腕および上腕に結節を形成した.前腕の結節からの生検を実施し,病理学的に巨細胞を混じた肉芽腫の形成がみられた.マイコセル斜面培地での滲出液培養で白色湿性のコロニーを形成し,カンジダを疑わせた.巨大培養,スライド培養でSporothrix schenckiiと同定した.臨床像と合わせてリンパ管型スポロトリコーシスと診断した.ヨウ化カリウム内服で瘢痕治癒し再発なし.ネズミ咬傷後に生じるスポロトリコーシスは稀であるが,深在性真菌症や人畜共通感染症として注意が必要と考えた.