日本臨床皮膚科医会雑誌
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論文
高齢者関連施設における皮膚疾患実態調査結果
常深 祐一郎川島 眞
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2016 年 33 巻 5 号 p. 637-646

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抄録

目的  高齢者施設における入居者の皮膚の乾燥や痒み,ならびに貼付剤による皮膚障害の有無やその対処についての実態を把握する目的で調査を行った. 方法  医療従事者向けポータルサイトの会員のうち高齢者関連施設の入居者の診療に携わる医師1,000名を対象としてインターネットによるアンケート調査を実施し,集計・分析を行った. 結果及び考察  210名から有効回答を得た(回答率21.09).特養・老健・療養病床が130名,有料老人ホーム41名,高齢者向け住宅18名,養護老人ホーム14名であった.診療科は,一般内科が121名で最も多く,精神科18名,循環器科13名,外科13名であった.皮膚科医は3名と少なかった.医師が診察している施設入居者のうち皮膚の乾燥や痒み(乾皮症)を有する割合は37.09と,先行研究の報告に比べて低い数値であり,見逃されている可能性がある.保湿剤によるスキンケアは,診察患者の39.79に実施されており,乾皮症の有症率とほぼ同じであった.高齢者施設では乾皮症と認識されれば何らかの保湿剤が用いられていると考えられる.しかし,乾皮症と認識されなければ保湿剤が用いられないことを意味し,十分なスキンケアが行われていない可能性が高いことが推察された.診察患者における貼付剤の使用率は17.59であった.貼付剤使用による皮膚症状の発現率は22.7%で,そのうち32.6%が貼付剤の使用を中断・中止を経験していた.貼付剤による皮膚症状は,乾皮症に対するケアにより軽減できることが示されており,乾皮症に対する日常的なスキンケアを実施することは,貼付剤による皮膚症状の軽減にも有用である.一方で医師が入居者の乾皮症を認知したきっかけは看護師からの申告が7割以上であった.高齢者施設では常勤医あるいは非常勤医の多くが皮膚科医ではないこともあり,医療スタッフとの連携を強化し看護師,介護士,入居者ならびにその家族に対する教育や啓発がより重要となる.

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