日本臨床皮膚科医会雑誌
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論文
経過中に自然治癒の機序が考慮されたリンパ管型スポロトリコーシスの1例
坪光 知子澤田 美月出来尾 格二宮 淳也石崎 純子田中 勝原田 敬之亀井 克彦
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2018 年 35 巻 3 号 p. 508-513

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抄録

53歳女.東京都某区在住.園芸など土いじりの生活歴はない.野良ネコを含む複数のネコを飼育している.初診の6か月前,右手背を虫に刺された後,皮疹が遷延・増悪し,手背近位側から手関節・前腕へと拡大した.201X年7月当科初診.右手背に小豆大から大豆大までの紅色結節が列序性,飛び石状に分布する.示指基部には黄色痂皮を付し,手背には表面びらんを呈し,一部融合している.前腕では短い線状痕が数個みられる.真菌学的には,手背の痂皮と皮膚生検組織片から培養したサブローブドウ糖寒天培地(25℃)よりSporothrix (以下S.) schenckii species complex を検出,遺伝子解析により,S. globosa と同定した.病理組織学的には,表皮は不規則に増生し偽癌性増殖を呈する.真皮内に好中球が集簇する微小膿瘍と,肉芽腫性炎症細胞浸潤がある.以上よりリンパ管型スポロトリコーシスと診断した.前腕の線状痕についてはネコの掻き傷など別症も考慮された.感染経路は,ネコに付着した土からの感染や,感染したネコから人畜共通感染症として発症した可能性を考えた.治療は初診の半年後の開始となり,ヨウ化カリウム300 mg/day が投与されたが,14日間処方以降受診が途絶えた.約2年後の再診時,皮疹の大部分は軽快しており,治療効果のみならず,原因菌の至適発育温度が低いことに関連して自然治癒の機序が加わったと考えた.しかし,左手背には自家接種と考える皮疹の新生があり,同様の真菌学的所見から治療の追加を要した.併用注意薬のカルシウム拮抗薬変更の上,イトラコナゾール100㎎/day (イトリゾール®)約3か月内服にて略治した.近年,遺伝学的同定がなされるようになったが,本邦報告における原因菌はいずれもS. globosa であり,自験例も同様であった.今後,スポロトリコーシスの最も優位な原因菌として定着していくであろう.

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