日本臨床皮膚科医会雑誌
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論文
接触皮膚炎を疑った上大静脈症候群の1例
田蒔 舞子飛田 泰斗史山﨑 佳那子石倉 久嗣尾﨑 享祐
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2019 年 36 巻 3 号 p. 383-387

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抄録

68歳,女性.初診約1ヶ月前から両眼瞼の腫脹を認め,顔面の発赤腫脹も生じ始めたため,当科へ紹介受診した.顔面は全体に腫脹しびまん性の紅斑を呈し,両手には鱗屑を付着する紅斑を認めた.草むしりなどの雑用という職歴から接触皮膚炎を疑い,ステロイド外用剤と抗ヒスタミン薬を処方した.1週間後の再診時,顔面の腫脹は著明に増悪し,両側頚静脈が怒張していた.上大静脈症候群を疑って,造影CTを施行したところ,縦隔に5cm大の腫瘤を認め,腫瘤は上大静脈に浸潤し,上大静脈内腔は高度に狭窄していた.また多発肺転移を疑う結節が散見された.縦隔腫瘍に伴う上大静脈症候群と診断した.直ちに放射線治療を行い,顔面の腫脹は改善した.解剖学的に生検が困難だったためカルボプラチンとパクリタキセルの化学療法を行い,腫瘍縮小後,縦隔腫瘍切除術を施行した.組織検査より乳癌の縦隔転移と診断した.その後,縦隔で再発し,初診から7ヶ月後に永眠した.顔面の腫脹に頚部,上肢などの表在静脈の怒張を伴った場合は,上大静脈症候群を考え,確定診断のために造影CTを行う必要がある.上大静脈症候群の原因が縦隔腫瘍の場合,オンコロジック・エマージェンシーとして急死の可能性もあり,放射線治療を始めとした早急な対応が必要である.上大静脈症候群は,皮膚科を受診する可能性も稀ながらあり,念頭になければほとんど診断は不可能であるため,皮膚科領域でも忘れてはならない病態であると考え報告する.

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