日本臨床皮膚科医会雑誌
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論文
梅毒性肝炎の併発を考えた第2期顕症梅毒の1例
長谷川 舞植木 理恵扇谷 咲子明石 顕野々垣 香織平井 周中川 裕太
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2019 年 36 巻 3 号 p. 401-407

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抄録

 68歳男.初診の2週間前より咽頭痛があり近医処方の抗菌剤を含む4種類の薬剤内服後,体幹・四肢に多発する瘙痒のない赤い皮疹が出現した.当科初診時,手掌を含む略全身に米粒大までの紅色丘疹が多数散在していた.咽頭は発赤・腫脹し軟口蓋に直径3mm大の乳白色の粘膜疹が散在していた.両側頸部に無痛性で弾性硬のリンパ節を触知した.陰部,肛門に皮疹はみられなかった.抗菌剤内服後に全身に皮疹が出現したことから薬疹を最も疑い,血液検査を行ったところ胆道系酵素優位の肝機能障害を示した.肝炎ウイルスマーカーは,B型肝炎のみ既感染パターンで,その他は陰性だった.抗核抗体,抗ミトコンドリア抗体も陰性で,腹部単純CT検査でも肝胆道系に器質的疾患を疑う所見もなかった.梅毒血清反応強陽性であったため,再度詳細な問診を行うと不特定の性交渉歴があった.全身の皮疹は丘疹性梅毒,軟口蓋の粘膜疹は梅毒性アンギーナと考え,第2期顕症梅毒と診断した.腹部丘疹の病理組織像は,真皮上層の血管周囲にリンパ球と形質細胞の浸潤があり,梅毒と矛盾しなかった.アモキシシリン内服による駆梅療法を開始後,皮疹は消退傾向となり,梅毒血清反応抗体値も速やかに低下した.トランスアミナーゼも低下し始めたが胆道系酵素が横ばいのためアモキシシリン増量し肝庇護療法を追加したところ,肝機能は速やかに正常化した.臨床経過からは梅毒性肝炎の併発,あるいは,第2期顕症梅毒に薬剤性肝障害が合併した可能性も考えられた.梅毒感染者が急増している現在,咽頭痛,皮疹,リンパ節腫脹,肝機能障害などをみた場合は常に梅毒を考慮する必要がある.

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© 2019 日本臨床皮膚科医会
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