日本臨床皮膚科医会雑誌
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論文
左前腕に生じた柵状被包化神経腫 (palisaded encapsulated neuroma)の1例
小林 祐香莉梅垣 知子石崎 純子田中 勝
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2020 年 37 巻 5 号 p. 650-654

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抄録

 78歳女性.約1年前に疼痛を伴う左腕の皮疹を自覚した.初診時,左前腕に直径4 mmの表面平滑,常色,弾性硬で可動性良好な皮内結節があった.病理組織は真皮深層の境界明瞭な結節性病変であり,異型性のない紡錘形の腫瘍細胞が束状に増殖していた.免疫組織化学染色では,S-100蛋白染色が腫瘍細胞の核と細胞質に陽性で,neurofilament染色は一部の腫瘍細胞の細胞質に陽性で,軸索に相当すると考えられた.またepithelial membrane antigen (EMA) 染色は結節の被膜に陽性であった.これらの病理組織学的所見からpalisaded encapsulated neuroma (PEN) と診断した. PENは中高年男女の顔面,とくに鼻周囲や頬,口唇などに好発する良性,単発性の神経系腫瘍である.本疾患の同義語にはsolitary circumscribed neuromaがある.自験例のように四肢に生じる例は比較的稀であり,S-100蛋白が陽性になるその他の神経系腫瘍と,病理組織学的な鑑別が必要となる.特にPENと神経鞘腫は豊富なSchwann細胞を有しS-100蛋白染色に陽性で,EMA染色陽性の被膜を有する点が共通するが,神経鞘腫は軸索を有さずneurofilament染色陰性となる点が異なる.また外傷性神経腫は軸索を有しneurofilament染色陽性であることがPENと共通するが,被膜を有さず結節周囲がEMA染色陰性となる点で鑑別される.また神経線維腫は軸索を僅かに混ずることがあり,時にneurofilament染色が弱陽性となるが,被膜を有さずEMA染色陰性となる点が異なる.他にもS-100蛋白陽性となる紡錘形細胞腫瘍は多数あるが,PENと同一の染色パターンを示す腫瘍はないことから,PENの診断に上記3つの免疫組織化学染色が有用である.

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