日本臨床皮膚科医会雑誌
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論文
鼡径部に発症した脂腺癌の2例
小松 広彦梅垣 知子田中 勝三浦 圭子布袋 祐子
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2020 年 37 巻 5 号 p. 668-673

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抄録

脂腺癌は脂腺への分化をもつ上皮性悪性腫瘍で,高齢者の頭頚部に好発することから,紫外線暴露との関係が示唆されている.今回我々は鼡径部に生じた脂腺癌を2例経験したので病理学的特徴の考察を踏まえて報告する. 症例1:50歳,男性.初診の1年前から右鼡径部に皮疹が出現し,増大した.約60×40 mm大の紅色腫瘤を摘出した.症例2:77歳,女性.20年前より左鼡径部に皮疹が徐々に増大した.27×15 mm大の潰瘍を伴う紅褐色結節を切除し,病理組織学的検討を行った.自験例2例とも,脂腺への分化を伴う異型性を有する腫瘍細胞が胞巣を形成しつつ増生しており,腫瘍胞巣の辺縁部は扁平な核を有する細胞で縁取りされていた.また免疫染色で,腫瘍細胞はEMA(epithelial membrane antigen)陽性かつBer-EP4陰性であったこと,腫瘍胞巣の中央部に存在する比較的淡明な細胞質を持つ細胞がアディポフィリン陽性であったことから,脂腺癌と診断した.症例1は脂腺癌として高分化型であり,比較的典型的な病理学的所見を呈したが,症例2は脂腺分化に乏しい有棘細胞様細胞で占められた低分化の脂腺癌であり,鑑別に苦慮した.低分化の脂腺癌は基底細胞癌や有棘細胞癌との鑑別が必要となるため診断に苦慮することがあるが, 脂腺において特徴的にみられる形態を見つけ,EMA,Ber-EP4,アディポフィリンを用いた免疫染色を行うことが有用であると考えられた.脂腺癌が鼡径部に発生するのは稀であり,紫外線曝露が少ないためと考えられる.今後,発生原因の検索も含めて症例の蓄積が必要であると考えられた.

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