【目的】遠視による読み速度への影響に関連する視覚的要因を明らかにするために、実験的に遠視を作成し、読み速度の変化およびその変化と視機能、自覚症状との関連を検討した。
【対象および方法】対象は19~24歳の健常若年成人29名。完全屈折矯正および両眼2 Dの遠視条件下で読み速度、視機能および疲労感に関する自覚症状の測定を行った。読み速度は、MNREAD-J(iPad版)を用いて測定し、読み速度変化率(遠視条件の平均読み速度/完全屈折矯正の平均読み速度)を求めた。また、視機能検査では、近見視力、近見視標を90秒間注視させた時の調節ゲイン、近見立体視、近見眼位、輻湊近点の測定を行った。視機能および自覚症状の変化量は、完全屈折矯正と遠視条件の測定値の差から求めた。
【結果】読み速度変化率は0.74~1.28であった。読み速度変化率と調節ゲインの変化量との間に負の相関を認めた(rs=-0.40、p=0.03)。一方、読み速度変化率と近見視力、近見立体視、近見眼位、輻湊近点および自覚症状スコアの変化量との間には相関を認めなかった。
【結論】遠視による読み速度の低下には近方視を持続している時の調節反応の正確性の低下が関与していることが示唆された。