抄録
5%パラジウム炭素の存在下, インドリン, ギ酸, シクロヘキセン, 水素化ホウ素ナトリウム, テトラヒドロキノリン, 2, 5-ジヒドロフランは, 穏和な反応条件下でリノール酸メチルを水素化した。これらの反応では, モノエン酸メチルへの選択性はかなり高かったが, 相当量の孤立トランス二重結合が生成した。10%パラジウムアスベスト又はパラジウム黒を触媒としたインドリンによる還元でもほぼ同様の結果が得られた。白金黒を触媒としたインドリンによる水素化では, 孤立トランス二重結合の生成は少なかったが, モノエン酸エステル生成への選択性はパラジウム触媒を用いた反応に少し劣った。10%白金アスベスト及びW-2ラネ-ニッケルの触媒活性は, 前述の諸触媒の活性よりも低かった。インドリンによる還元では, リノール酸メチルの外に, trans-9, trans-12-オクタデカジエン酸, アルカリ共役化オクタデカジエン酸, オレイン酸, エライジン酸のメチルエステルも基質として試みられた。触媒がパラジウム炭素の時には, 全てのジエンの反応性はお互に似ていた。2つのモノエンの反応性も相互にほぼ等しかったが, ジエンの反応性よりも低かった。白金黒を触媒とした反応では, 全ての基質の反応性はほぼ等しかった。