油化学
Online ISSN : 1884-2003
ISSN-L : 0513-398X
スクシンイミドエステルの化学 (第8報)
水溶液中でのN-スクシンイミジルベンゾエートによる脂肪族第一級アミンのN-アリールカルボニル化反応の速度論的研究
平田 博文樋口 勝彦山科 孝雄
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1987 年 36 巻 11 号 p. 840-846

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抄録

N-スクシンイミジルベンゾエート (1) と脂肪族第一級アミン (2) (RNH2 : R=n-Pr, iso-Pr, iso-Bu, n-Bu, s-Bu, t-Bu, n-Am) との反応を25℃, 水溶液中 (7.0≦pH≦10.5) で速度論的に検討した。 (1) による (2) のN-アリールカルボニル化は (1) の分解と競争的に起こり, 速度はV= (k1, d+k2[2]) [1] で表すことができた。ここで, k1, d及びk2はそれぞれ分解及びN-アリールカルボニル化の速度定数を示す。
(2) のアルキル鎖の誘起効果及び立体障害のため, その反応性はn-Pr>iso-Pr, iso-Bu>n-Bu>s-Bu>t-Bu, n-Pr n-Bu n-Am, iso-Pr s-Buの順であった。log k2 vs. pHのプロット (pHプロフィル) は7.0≦pH≦10.0で良好な直線性を示し, その傾きは1.0であった。メタ置換 (1) によるN-アリールカルボニル化の速度はHammettのσ値と正の相関性を示し, ρ値は+1.2~1.3であった。オルト置換 (1) の場合, 速度は相当する安息香酸のイオン化定数から期待されるものよりも遅く, 置換基の立体障害のためその反応性はo-F>o-Cl>o-Brの順であった。速度比, 10-3 k2/k1, dはオルト, メタ置換いずれの場合も溶媒の塩基度 (pH) とともに増加した。直鎖及びiso-Bu基を有する (2) では, 速度比は1.0よりも大きかったが, 1位にアルキル鎖を有する場合は1.0よりも小さいことが分かった。以上の結果から, 可能な機構を示し, 考察を行った。

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