2021 年 15 巻 1 号 p. 45-52
厚生労働省の統計によると労働災害中,転倒災害が最も多く,平成27年から「STOP !転倒災害プロジェクト」が推進され,リスク要因になる設備改善等が促されているものの転倒災害は減少していない.高齢者雇用が進む中,転倒災害で特に60歳以上の労働者の占める割合が高くなっている.本研究では労働衛生とリハビリ分野の専門家による協議および,文献調査も参考にし,腰痛対策も加味した転倒予防体操を開発した.3か月間の体操実施により閉眼片足立ち,2ステップテスト,片脚立ち上がりテストの結果が改善し,バランス能力,下肢の関節可動域向上や下肢,体幹の筋力強化につながったと考えられた.労働者の転倒の個人要因への介入を目的とした転倒予防体操が,身体機能の向上に有効である可能性が示唆された.