労働安全衛生研究
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15 巻, 1 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
巻頭言
原著論文
  • 西脇 洋佑, 佐藤 嘉彦
    原稿種別: 原著論文
    2022 年 15 巻 1 号 p. 3-11
    発行日: 2022/02/28
    公開日: 2022/02/28
    [早期公開] 公開日: 2022/01/29
    ジャーナル フリー

    マグネシウム(Mg)粉末やその合金粉末と水の反応は,反応時の発熱による温度上昇および可燃性ガスの発生から,度々発火による災害の原因となっており,また火災後の消火活動を阻害し,被害の拡大や長期化を招き,多くの労働者が被災している.災害発生の未然防止と被害低減のためには,リスクアセスメントの結果に基づく的確なリスク低減措置を講ずることが有効であり,的確なリスクアセスメントを実施するには,Mg粉末の熱的危険性を的確に評価しておく必要がある.しかし,水が存在する系では,水の蒸発潜熱が熱分析から得られる見かけの発熱挙動に影響し,熱的危険性が過小評価されることで,適切な対策を講ずることができない恐れがある.本研究では,密閉容器を用いた定速昇温条件での熱分析について,Mg粉末と水の発熱反応をモデルに水の蒸発潜熱の影響を補正する手法を検討し,その影響を明らかにした.得られた発熱挙動に対する反応速度論的解析結果の比較から,水の蒸発潜熱の影響で,反応速度論的解析結果の解析値の妥当性を示す決定係数が低下し,得られる反応速度パラメータも変化することが示された.特に発熱速度が低い反応では補正時の大きな反応速度パラメータの違いが生じ,補正を行わない場合,反応初期において見かけの活性化エネルギーが高く算出されることで熱的危険性が過小評価され,誤った対策から労働者の死傷に繋がる可能性が示された.

  • 高橋 弘樹, 高梨 成次, 堀 智仁
    原稿種別: 原著論文
    2022 年 15 巻 1 号 p. 13-22
    発行日: 2022/02/28
    公開日: 2022/02/28
    [早期公開] 公開日: 2022/02/14
    ジャーナル フリー

    建築物の解体工事では,壁等の下部を切削してから,外壁を引き倒す転倒工法と呼ばれる工法が用いられている.小規模な現場では,ワイヤーロープ等を用いて人力で引き倒しており,壁等の切削作業中に外壁が転倒し,作業者が被災している.切削作業中の外壁の建物外側への転倒防止には,ワイヤーロープ等を用いているが,外壁の建物内側への転倒防止には,確立された方法はなく,対策がとられていないのが現状である.本研究では,外壁の転倒災害を防止するため,仮設部材を用いた簡便な工法を提案し,実験によりその工法の強度等を検討した.その結果,本研究で提案した工法を用いて,中規模建築物の外壁の転倒を防止できることが分かった.

事例報告
  • 鈴木 一弥, 吉川 徹, 高橋 正也
    原稿種別: 事例報告
    2022 年 15 巻 1 号 p. 23-35
    発行日: 2022/02/28
    公開日: 2022/02/28
    [早期公開] 公開日: 2022/02/20
    ジャーナル フリー

    目的:過労死等の防止のために職場で行う自主的・組織的対策を支援する方法あるいはツールを検討するための文献・資料調査を実施する.調査結果に基づいて既存の成果と今後の課題を整理する.

    方法:長時間労働による心身の健康障害の予防のためにこれまでに開発されたツールの事例(対策支援のチ ェックリスト, ガイドライン等)を学術文献データベース(MEDLINE,PubMed,JMEDPlus)の検索で収集し た.検索キーワードはツール等を示す用語(チェックリスト,ガイドライン,マネジメントシステム,ツールキ ット)と労働時間との論理積とした.2000~2019年の英語および日本語の学術論文を対象とした.公的または 公益的機関が提供しているツールに関して,インターネットによる探索的な検索も実施した.

    結果:学術文献データベースで72件(英文)および67件(日本語)がヒットした.タイトルと抄録の内容 により,対策を支援するツールの開発・提案や言及がなされた文献を選択した結果,労働時間の長い労働者に対する面接指導の実施を定めた「総合対策」への組織的な対応方法を改善するアクションチェックリストの開発が 1編,面接指導を支援する実務的ツールに関する研究が2編,交代勤務に関するチェックリストの開発が1編,航空安全を主目的としたFRMS(Fatigue risk management system)に関する研究が2編あった.インターネットの 検索の結果では,省庁と公益的な組織によって,いくつかの特定の業種・職種を対象としたツールの公開があった.医療労働のコンプライアンス支援ツール,交代制勤務に関するガイドライン,職場環境の自主的改善を支援するアクションチェックリスト,運送業における業務の内容や建設業における商慣行の改善のためのガイドライン,医療と運送業の対策好事例の提供等があった.交代勤務に関するガイドラインは,その予防的・包括的な内 容が特に参考になると思われたので,4種のガイドラインの内容を整理して表に示した.収集されたすべてのツ ールを,包括性,直接の使用者,改善の対象,介入の方法等に基づいて分類した.

    考察:長時間労働にかかわる自主的な取り組みを支援するツールの開発は現状では少数であった.組織体制の改善,参加型の人間工学的改善の支援,ストレスに関わる心理社会的要因の改善,職種・業種に特有の業務の改善を支援するものがあり,それぞれに特徴があった.過労死等を予防する包括的な対策ツールの要件に関する参考資料の収集ができた.

調査報告
  • 板垣 晴彦
    原稿種別: 調査報告
    2021 年 15 巻 1 号 p. 37-43
    発行日: 2022/02/28
    公開日: 2022/02/28
    [早期公開] 公開日: 2021/10/08
    ジャーナル フリー

    労働災害による死亡者数は減少を続けている.この死亡者数の減少をさらに推し進めるために,死亡災害につながりかねない休業が6カ月以上となった重篤な労働災害を防止することが課題となっている.そこで,休業6カ月以上の負傷者数を調べたところ,負傷者数が明らかに増加しているとわかった.そこで,2017年に発生した事例について,製造業,建設業,交通運輸業,第3次産業の4つの業種に区分して事故の発生状況を分析した.そして,負傷者数が多かった事故の型を明らかにするとともに,その典型的な事故パターンを示した.あわせて,これら労働災害の今後の防止対策について提言した.

資料
  • 藤井 朋子, 高野 賢一郎, 乍 智之, 川又 華代, 楠本 真理, 松平 浩
    原稿種別: 資料
    2021 年 15 巻 1 号 p. 45-52
    発行日: 2022/02/28
    公開日: 2022/02/28
    [早期公開] 公開日: 2021/11/17
    ジャーナル フリー

    厚生労働省の統計によると労働災害中,転倒災害が最も多く,平成27年から「STOP !転倒災害プロジェクト」が推進され,リスク要因になる設備改善等が促されているものの転倒災害は減少していない.高齢者雇用が進む中,転倒災害で特に60歳以上の労働者の占める割合が高くなっている.本研究では労働衛生とリハビリ分野の専門家による協議および,文献調査も参考にし,腰痛対策も加味した転倒予防体操を開発した.3か月間の体操実施により閉眼片足立ち,2ステップテスト,片脚立ち上がりテストの結果が改善し,バランス能力,下肢の関節可動域向上や下肢,体幹の筋力強化につながったと考えられた.労働者の転倒の個人要因への介入を目的とした転倒予防体操が,身体機能の向上に有効である可能性が示唆された.

技術解説
  • 辻 洋志, 林 江美, 池田 宗一郎, 玉置 淳子
    原稿種別: 技術解説
    2022 年 15 巻 1 号 p. 53-59
    発行日: 2022/02/28
    公開日: 2022/02/28
    [早期公開] 公開日: 2022/02/08
    ジャーナル フリー

    日本では2020年1月からの新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染拡大に伴い,職場では地域の感染状況や職場環境に合わせて適切な感染防止策を行う事が求められている.複数の学術・業界団体がガイドラインを発表し,防止策のアイデアが提供されているものの,現場ではすべての対策を講じることは現実的に困難である.効果の優れる対策を検討し,優先的に行う事が求められている.従来から職場の衛生管理では,複数の介入を組み合わせて,また介入は優先順位をつけて行う事を基本とする労働衛生管理モデルが広く利用されてきた.本稿では代表的な労働衛生管理モデルを改めて紹介する.また,それら労働衛生管理モデルを応用した,優先順位に基づく効率的な職場におけるCOVID-19対策について検討し,整理された対策視点を提案する.

研究紹介
  • 灰野 健二, 高松 宜史, 清水 崇一
    原稿種別: 研究紹介
    2022 年 15 巻 1 号 p. 61-64
    発行日: 2022/02/28
    公開日: 2022/02/28
    [早期公開] 公開日: 2022/02/17
    ジャーナル フリー

    海外において,火災で発生する有害物質に曝される消防隊員は,将来的に健康を害するリスクを有しているとされており,それを低減するための対策が既に講じられている.当庁では,火災現場で発生する有害物質の中毒性を中心に検証し,必要な対策を提言した実績があるものの,発がん性の観点から検証した実績は乏しい.本検証では主として,発がん性を有する揮発性有機化合物(以下「VOC」という.)であるベンゼン(以下「BZ」という.)発生時の火災環境とBZ濃度の関係等を検証した.また,その実験結果の裏付けをとるため,実際の火災現場における検証も実施した.その結果,火災現場ではVOCが発生し,火点室内や可燃物が高温になるほどBZの発生量が多いことが明らかとなった.

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