労働安全衛生研究
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原著論文
ロープ断面内の位置を考慮したIWRC 6×Fi(29)の素線断線評価
緒方 公俊 山口 篤志山際 謙太佐々木 哲也
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2022 年 15 巻 2 号 p. 113-122

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抄録

ワイヤロープ(以下,ロープ)は,クレーンやエレベータなどの機械構造物の主要部品の一つである.荷の巻上げ巻下げ時など,ロープは張力を受けながらシーブ上を往復動するため,曲げ負荷を繰り返し受ける.これにより,ロープを構成する素線が徐々に断線し,最終破断に至る.そのため,素線断線状態を考慮した保守,運用がロープの破断事故防止のために重要である.近年,クレーン用ロープの主流となっているIWRCロープについて,繰り返し曲げ負荷による素線断線が目視確認できないロープ内部で発生することが明らかになった.そのため,ロープ内部の素線断線の検出方法や断線メカニズムの解明に関する研究が進められている.一方で,ロープは複数の素線の撚り合わせによって構成されているため,ロープの軸方向に垂直な断面内での素線断線位置の特定が難しく,これまで詳細な評価が行われていなかった.そこで本研究では,ロープのS曲げ疲労試験によって作成した損傷ロープを対象に,近年提案された推定手法を用いてロープ断面内の位置を考慮した素線断線状態の評価を試みる.張力1水準,中断回数4水準のS曲げ疲労試験を実施し,得られた損傷ロープの素線断線分布の結果から,シーブ接触部や隣接する素線との位置関係によって素線断線しやすい条件があることを明らかにした.さらに,可視断線の発生メカニズム,現行の廃棄基準との関係についても考察した.

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© 2022 独立行政法人 労働安全衛生総合研究所
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