2023 年 16 巻 1 号 p. 87-92
平成28年6月1日より,労働安全衛生法第57条第1項の政令で定める物及び第57条の2第1項に規定する通知対象物に対するリスクアセスメント(Risk Assessment;以下RA)等の実施が義務化されている.労働安全衛生総合研究所では,化学物質を取扱う事業場でのプロセス災害(火災・爆発等)発生を防止するためのRA等の進め方の“あるべき姿”を示した技術資料(JNIOSH-TD-No.5)をまとめ,公開している.一方,化学物質のRA等の実施には,化学物質の特性の理解や化学反応に関する知識などを必要とし,RA等実施のために参考となる情報・資料や支援ツールの提供が望
まれている.そこで新たに「化学物質リスクアセスメント等実施支援策に関する研究」と題したプロジェクト研究を立
ち上げ,化学物質の危険性に焦点を当てたRA等の実施を支援するための方策について検討し,RA等実施の参考となる資料や情報を2冊の技術資料(JNIOSH-TD-No.7,JNIOSH-TD-No.8)にまとめている.また,その他にも,暴走反応及び混合危険に対するRA等を実施するためのデータを整備するとともに,反応危険を特定するためのツールを開発
している.本稿ではこれらの研究成果物について紹介する.