2024 年 17 巻 1 号 p. 43-51
本研究では,運輸関連企業の事務職員が要望する職場改善をメンタルヘルス改善意識調査票(MIRROR)で捉え,ストレス対処能力の高低に基づき,要望するMIRRORの項目とワーク・エンゲイジメントとの関連を明らかにすることを目的とした. 事務職員86名に無記名自記式質問紙調査を実施した.内容は,属性,MIRROR,日本語版ユトレヒト・ワーク・エンゲイジメント尺度(UWES),首尾一貫感覚(SOC)とした.SOCが中央値より高い群(高SOC群)と低い群(低SOC群)に分類し,MIRRORの項目毎の要望の有無でUWESの得点を比較した. 質問紙は52名から回収された(回収率60.5%).対象者の平均年齢は36.5歳であった.高SOC群の改善要望ありの群では,「その日の業務量を,自らの裁量で調整できる」で活力が有意に低く,「上司が忙しすぎないので,部下からの相談を受ける余裕がある」と「上司が多忙な職場では,代理を務める者が設定されている」では総得点などが有意に高かった.低SOC群の改善要望ありの群では,「他のグループとの連携・協力はうまくいっている」と「本来の業務を圧迫するほどの余分な仕事はない」で総得点などが有意に高く,「職場では,各人の能力や工夫を生かすことができる」では総得点などが有意に低かった. 高SOC群では,業務量の裁量調整に関する要望がある場合に,裁量の範囲を調整できるよう労働者の要望に耳を傾けることが,低SOC群では,自分の能力や工夫を生かしたいという要望がある場合に,それを尊重する職場改善が重要となることが示唆された.